「タイポグラフィ」という言葉の意味を説明するにはとても苦労します。「原義」に忠実に説く方もいれば、協会が宣言した「広義」を元に説く方、そして原典に触れずに文字のデザインだと思い込んでしまっている方。
誤解を恐れずに言うと、私自身はどれも認識した上で中立の立場を取っています。ここでは人それぞれの語彙による誤った解釈、誤謬をさけるため明言はしません。逃げます。逃げさせてください。
今回はタイポグラフィに関する書籍を読んできた中で、私的ではありますが参考にしている書籍を厳選して「2冊だけ」列挙します。
あまり多くの書籍をお勧めするとそれこそ読まずに離れてしまうので。
カウンターパンチ 16世紀の活字製作と現代の書体デザイン
この書籍では「書字」「レタリング」「タイポグラフィ」について明確に記載されています。活字についてもとても詳しすぎるほどに書かれていますので活版印刷に興味のある方にもオススメです。
タイポグラフィ・ハンドブック 第2版
この書籍はハンドブックという名の通り、カバンに忍ばせられる小ぶりな辞書サイズの書籍で、タイポグラフィに関するありとあらゆる情報が書かれています。後半にはタイポグラフィの庭にある「印刷物」についても記載されており、様々な印刷物の規格等も事細かに明記されているので度々見返す良本です。
おわりに
タイポグラフィに関するさまざまな書籍を読んできた中で感じたのは、どの書籍も似て非なることを書かれているものが多いということでした。深くその書籍を読み込んでいくと同じことを書いてはいたりするのですが、その冒頭・導入部分にとても違いがあるなと感じます。
タイポグラフィに関する「良書」はどの書籍もタイポグラフィに対して愛が溢れているが故か、世の中の誤った認知に対して少し喧嘩腰で穏やかな口調ではありません。それは現代においても同じで、いわゆる「タイポグラフィ警察」と認知される方にも同様の姿勢を感じてなりません。怖いです。
ここからは私のいち意見ですが、
原義も広義も誤用も私は全てを受け止めたいと思っています。その理由として「言葉」は変化するものであると思っているからです。言葉の意味が変わると歴史そのものも変わってしまいますし、たしかに原義を守り通したいという気持ちもわかりますが、誤用を頻繁にされる時代背景を考えると言葉の「揺れ」にも目を向けるべきではないかと。タイポグラフィとは情報を正確に複製・伝達する技芸の中で、この「正確」という部分において厳密すぎているのではと思っています。こんなことを言うとすぐ警察がぐうの音も出ないほどに完全論破してきますがその姿勢がぼくは苦手です。論破ではなくきちんとディベートしてアンチテーゼにもならない意見も聞いた上でアウフヘーベンしていただきたい。知識があるとかないとかそういう話ではなく、文字ではなく言葉でコミュニケーションを取りましょう、そう願っています。