2020年8月8日-30日に京都のギャラリーVOUで開催された
彫刻家・葭村太一さんの個展、
「REACTION」
のヴィジュアルを担当させていただきました。
ヴィジュアルの話
このヴィジュアルのデザインでは、「作品の大胆なトリミング」を「あえて」行っており、
彫刻作品の一部分である「足」と「腕」しか映していない、彫刻作品の全体像が掴めない構図になっています。
本来であれば作家さんの作品をヴィジュアルのためにこのようなトリミングをすることは「タブー」ですが、コンセプトをお伝えして快く了承をいただいております。
個展開催時の時世
この個展が行われた2020年の8月は当時、COVID-19の話題にもまだまだ敏感で個展自体も果たして開催できるのかどうかもあやふやな時期でした。
そんな中、「REACTION」と題したこの個展はとてもセンシティブなタイトルでした。
「REACTION」とは「ACTION」に対しての応答、すなわち、個展に来ていただくという行為が「REACTION」そのものになります。
今回のグラフィックではその「REACTION」という行為に私なりの「REACTION」を返すことを制作時のコンセプトとして掲げ、制作を始めました。
コンセプト
ヴィジュアルでもわかるように彫刻作品の全体像をトリミングすることで、ヴィジュアルを見た方にさまざまな憶測が生まれます。どのような人物が彫られているのだろう、裸像なのかはたまた、ヒトではない「何か」なのか。作品の観覧前に抱いているイメージ像や心理状況を生み出すことが、私が考えたコンセプトでした。
この試みによって個展へと向かう動線(ポスター本来の目的)をつくり、実際に作品を見てもらった際にまた衝撃が生まれます。恐らく万人誰もが予想できない彫刻作品だからです。この衝撃は全体像をヴィジュアルとして使用する従来のヴィジュアル表現であれば生まれ得ない感覚・感情です。
実際に作品を見た方はその衝撃の後、「この作品はどういう作品なのだろう」という美術作品を見た際に感じる純粋な感情が湧きあがり、作家や作品との対話が生まれます。
おわりに
このヴィジュアル制作は、私が在籍する大阪は北加賀屋に位置する「Super Studio Kitakagaya」というアーティスト・クリエイターのためにひらかれた大型シェアスタジオにおいても初めてのコラボレーションになります。このヴィジュアル制作を通して私は自身のデザイン観が大きく変容・パラダイムシフトしたことを感じています。とても思い出深くこれからのクリエイター人生の中でも大切な経験をさせていただきました。
*こちらのポスターは海外の歴史的伝統のあるクリエイティブアワード
「Graphis」にて「Honorable Mention」をいただき、書籍に掲載されました。