デザインの話「MacGuffin」

MacGuffin

東京は代々木駅、東口改札を抜けてすぐにあるGallery TOHにて6/19 – 7/4に開催されます、
アーティスト・松井 照太さんの個展
MacGuffin -変転するイメージ-」
のヴィジュアルを担当させていただきました。

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今回はそのヴィジュアルについて考えたこと、表現したこと等をしたためるべく親指を走らせようと思います。

目次

タイトル「MacGuffin」について

まず、聞き慣れないこの「MacGuffin」とはどう言った意味なのか。
以下、Wikipedia参照

マクガフィン (MacGuffin, McGuffin) とは、小説や映画などのフィクション作品におけるプロット・デバイスの一つであり、登場人物への動機付けや話を進めるために用いられる。特にスリラー映画で多用され、泥棒が狙う宝石やスパイが狙う重要書類などがマクガフィンの典型例である。しかし物に限定されず、出来事や人物などもマクガフィンに含まれる。

Wikipedia より

つまりは、
スパイ映画で「ある重要なデータが入っているCD」があるとする。それを奪うのがこの映画の最大の目的であるのにも関わらず、この「CD」は他のメディアやモノに変わっても物語に何ら差し支えが無いというもの。これが例えば、ハンコや指輪に変わったとしても大きな影響は無い。
物語にとってとても大事な要素であるはずのモノが「代替が可能である」という奇妙な構成で成り立っている。

今回、キュレーターの渡邊 賢太郎さんからこの松井 照太さんの個展の話をお聞きし、作品をみせていただいたときにあまりにも作品が素敵だったので即答で食い気味にヴィジュアル制作を請けさせていただきました。

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「MacGuffin」という難しいタイトルを掲げたこの個展のヴィジュアルにはどのようなコンセプトが最適なのか、渡邊さんとディスカッションをし進めていきました。

考察

MacGuffinの意味を再度調べ、理解度と解像度を自身の中で上げていき、どう昇華しようかと作品を眺めながら考えました。

私的な感想で恐縮ですが、
松井さんの作品は、素材と素材とが絶妙な立ち位置で緊張感を保ちながらも、その緊張感は決して苦しいモノではなく、儚さと愛くるしさを内包したモノだと感じました。また、素材に対しても修練と愛を感じ、今までに味わったことのない感覚に出会わさせてくれました。

コンセプト その1

松井さんの作品には、石や蛍光灯、アクリル等が用いられていて、それらの素材たちはお互いのことを想い合うかの様に優しく接しています。
今回のタイトルや会期といった文字要素を素材と見立てて組み上げることで、ひとつの答えとしました。

コンセプト その2

次にMacGuffinというタイトルをどう回収していくか。
本来個展タイトルとは一番目立つべき要素だと言えますが、実際のところタイトルは物語の始まりを告げるものではあるが、これもまた代替可能であり、この構図こそがMacGuffinなのではないのかと考え、タイトルを目立たせながらも隠すというコンセプトを思いつきました。

仕様

松井さんの作品には性質の異なる素材が呼応し、様々なテンションを生み出しているのが見受けられます。
今回のヴィジュアルではその異素材の面白さも取り入れようと思い、作家性・作品性を汚さない様に注意を払いながら、紙に蛍光グリーンの塩ビフィルムを貼りこみ、「タイトル」と「石」を覆い隠しました。
そのことにより従来のフライヤーには無い、作品を模した取り扱いが少し難しいデリケートなフライヤーが完成いたしました。

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裏面ではMacGuffinというタイトルの上にフィルムの帯を乗せて、打ち消し線のように作用させています。下部に装飾的に入っている帯は有っても無くても良い、そのようなことを揶揄しています。
そして、この上下の帯を同時に見た時には「=」が生まれます。「=」すなわち「代替性がある」ということを意味します。

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最後に

松井さんの今回の作品には面白い価格設定がしてあり、

【1g = ¥10】

という「石の重さ」が作品の「価格」に関わってくる『レート』として機能しています。

作品の価格はエディションの観点等様々だが、ギャラリーが決めることが少なくない。しかしこの価格設定はアート市場に面白い流れを生むのではないだろうかと感じています。
無闇矢鱈に高騰している現在の日本のアートシーンの文脈にハマらない、独立した健全で原始的な価格設定。

来年には【1g = ¥100】になっているかもしれない。
再来年には【1g = ¥1000】になっているかもしれない。

作家本人がレートを操作出来るということは、作家が業界の悪しきしがらみから己の身を守ることにも繋がってくるのではないでしょうか。

コロナ渦中で言いにくくはございますが、
是非ギャラリーにて実物をご覧ください。

6/19 – 7/4 
火・水 定休日
Gallery TOH

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MacGuffin

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